脈波検査

◇糖尿病は血管病です

糖尿病では、比較的細い血管が障害されて起こる腎症や網膜症、神経障害などの合併症(細小血管障害といいます)と、大きな血管がつまることによって脳梗塞、心筋梗塞などの合併症(大血管障害)があります。全身をくまなく巡っている血管が動脈硬化を起こしているかを直接みることはできませんが、近年、いろいろな方法で動脈硬化を調べられるようになりました。

このフォルムという器械は、ABI とPWVという二つの指標を同時に測定することによって、大きな血管の状態を把握することができます。実際の測定にかかる時間は5-10分で痛みなどの苦痛はほとんどありません。

1) ABI(足関節/上腕血圧比)

 両手、両足首の4ヶ所の血圧を同時に測って、糖尿病に合併しやすい閉塞性動脈硬化症(ASO)を診断する検査です。この病気は、足を養っている動脈が動脈硬化によって狭くなるため、足が冷たくなったりしびれたりする血流障害が生じます。閉塞性動脈硬化症では、しばらく歩くと足が痛くなり、立ち止まるとよくなるという「間歇性(かんけつせい)跛行(はこう)」が特徴的です。進行すると足の壊疽(えそ)を起こして足の切断に至ることもあります。

 この検査は、動脈性閉塞硬化症の自覚症状が出現する前に病気を早期に発見できます。足首の血圧/腕の血圧の比が0.9以下であれば足の血管が詰まっている可能性があります。

2) PWV(脈波伝播速度)

 心臓から押し出された血液の脈波は、血管が硬いほど速く伝わるという原理を利用して、大動脈の硬さを判定する方法です。この数値が高いと、狭心症・心筋梗塞と強い相関があるといわれています。また、脳梗塞を起こした糖尿病患者ではこの数値が高い傾向があります。したがって、この検査で心筋梗塞や脳梗塞などの起こりやすさを知ることができます。PWVの数値が高いほど血管は硬くなっており、脳梗塞、心筋梗塞を起こしやすくなります。PWVの基準値は1400 cm/秒以下であり、1000-1400の方は注意が必要です。